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日本の不動産価値は新築時が一番高く、あとは築年数に比例して減価していくことが一般とされています。
一方、アメリカでは築年数は必ずしも重要視されず、「実際に物件が使用できる状態であるかどうか」が特に重視されます。そのため、築100年以上の物件であっても、修繕を重ね、未だに建物価値がゼロにはならずに、資産として評価されている例も多くみられます。
日本では、中古物件を壊して建て替えるという「スクラップ・アンド・ビルド」の発想が根本にある為、経年に応じて物件価値が下がっていきますが、アメリカでは不動産は「使える間は資産」という捉え方をされます。
また、日本では経年による物件価値の減価とともに賃料収入も減額しますが、アメリカでは修繕をしっかりと行えば、物件価値を維持したまま賃料収入も得られます。 さらに、必要な修繕を持続することによって物件価値が維持され、物件を転売するときも大変有利に働くことになります。
日本で不動産市場で流通する住宅物件のうち、中古は15%に過ぎず、一方米国では中古が90%以上を占めます。いかに日本の住宅市場が新築偏重であり、中古住宅市場が小さいかということが数字に表れています。
また、日本の住宅の平均寿命が約26年であるのに対し、アメリカの住宅の平均寿命は約44年。築100年以上できちんとメンテナンスを行い、維持されている物件も少なくありません。
日本 | 新築 | 中古 |
---|---|---|
件数 (戸) | 920,537 | 169,000 |
価格 | ¥42,270,000 | ¥23,580,000 |
アメリカ | 新築 | 中古 |
---|---|---|
件数 (戸) | 510,000 | 5,200,000 |
価格 | $352,475.00 | $269,941.67 |
出典元:
国土交通省 / 平成26年度住宅経済関連データ
Fannie Mae, Housing Forecast 2015
Trading Economics, United States Existing Home Sales 2015
日本の住宅の短い耐用年数は減価償却にも反映され、中古住宅の価格は、新築時の56%まで下がってしまいますが、アメリカでは築100年以上のものも含み、平均75%を維持し、100%を超えているものも珍しくありません。
住宅の価格上昇というと、私たち日本人はどうしても土地価格の上昇をイメージしてしまいますが、アメリカでは必ずしもそうとは限りません。土地と建物一体での住宅として、そして住宅が立ち並ぶ街並み全体として、その価値が高く評価されるのです。
中古市場が活発なこと、これはつまり投資家にとっても有利な運用が可能になるケースが増加することを意味します。
アメリカの不動産マーケットの仕組みは、公正で、安全な取引がスムーズに行われるよう、非常によく整備されています。また、特に住宅不動産は、物件の詳細情報や地域情報、過去の取引歴などが公開されており、誰でも容易に情報収集することが可能です。
そもそも不動産の価格というのはどのように決定されるのでしょうか。
基本的には不動産の価格は、主に下記の要素より決定されます。
これを実務上の価格見積もり法に置き換えますと、要は価格の見積もりをしたい当該不動産の基本データ(ロケーション、建物の面積、建物の階数、部屋数、駐車場の有無等)を確認し、これらの条件とよく似た物件が近隣にて所在するかをデータベースで検索し、類似物件がいつ、どこで、どのように、いくらで売却されたのかを確認すれば、当該物件の現在価格を見積もることができるわけです。
上記の不動産価格の見積もり法のことを「Comparable Method(取引事例比較法)」といいます。米国での不動産の売買は非常に頻繁に行なわれており、しかも売買の情報の全てが公に公開されています。従って、近隣の不動産物件の情報を収集することが非常に容易にできるため、不動産物件の価格査定法としては、Comparable Method(取引事例比較法)が最も広く使用されているのです。
米国では、不動産物件情報を誰でも無料で検索、閲覧できるWebサイトが複数あります。下記が代表的なサイトです。
例えば、米国内で気になる不動産物件の住所をGoogle(www.google.com )で検索してみてください。すると、その住所にマッチングした無料サイトの情報がたくさんヒットされると思います。また、物件の価格、間取りや、購入を考えている地域などの条件で検索し、売り出し中の物件を誰でも容易に調べることができます。これらの物件情報は、高い精度を誇り、広く活用されています。このように米国内の不動産物件情報はほとんど全てが公になっているため、驚くほどの情報量を瞬時に検索することができます。
上記に加え、米国内では、全米不動産協会(National Association of Realtor/NAR)の会員である不動産ライセンシーが利用可能であるMLS(Multiple Listing Service)というWebサイトがあります。
このサイトは不動産ライセンシーしか詳細な情報を見るためのメンバーになることはできませんが(ゲストメンバーにはどなたでもなれます)、メンバーページの中には非常に多岐に渡る物件情報、物件履歴、比較物件情報等が掲載されています。
このように、米国不動産はマーケットのシステムがオープンで、非常に良く整備されているために、不動産売買、そして不動産を担保にした貸出が非常にスムーズに行なわれているのです。
下図が、米国における不動産取引の際の典型的な仕組み、およびその登場人物です。
米国不動産取引での大きな特徴は、エスクロー会社とタイトル保険会社が取引に介在する点にあります。
この2社が不動産の売買及び貸付時における所有権移転並びに抵当権設定等の諸手続きを行ないますので、米国不動産マーケットでは非常にスムーズに取引が進みます。
日米の不動産取引には、非常に似た点もあれば、異なる点も存在します。
両国の不動産取引の特徴としては、以下のような点が挙げられます。
アメリカ | 日本 | |
---|---|---|
持家平均所有年数 | 5-8年 | 長期 |
売買手数料の支払い | 売り手 | 買い手と売り手 |
売買交渉、コーディネート | 不動産エージェント | 不動産エージェント |
決済業務 | エスクロー | 司法書士 |
負債・瑕疵の確認・登記事務 | タイトル保険会社 | 司法書士 |
持家支払い利息の所得税控除 | 借入金元本が $1,000,000 以下であれば 全額控除可能 | 一部制限あり |
持家固定資産税の所得税控除 | 全額控除可能 | 不可 |
住宅所得税 | なし | あり |
建物にかかる消費税 | なし | あり |
キャピタルゲイン (売却利益) の 税務上優遇措置 | 2年以上の居住で不動産 $500,000 (単身: $250,000) の所得控除 | 住居用不動産は最高 3,000万円の所得控除 所有5年未満は40%課税、それ以上は20%課税 |
不動産関連税 | 固定資産税 / 譲渡税 | 印紙税、登録免許税、都市計画税等 |
個人保証の有無 | 売り手 | 買い手と売り手 |
売買手数料の支払い | 無し ノンリコースローン (非遡及型融資) が一般的。 抵当物件回収に対する権利のみで個人資産にはおよばない。 | 有り リコースローン (遡及型融資) が一般的。 貸し手 (Lender) は個人資産差し押さえの権利あり。 |
新築:中古比較 | おおよそ 1:8 | おおよそ 10:1 |