米国不動産 Q&A 教えて!けいこ先生

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けいこ先生

けいこ先生(LA在住)
出身地:東京
LAで事務所をもつCPA
30歳
日英バイリンガル

けいこ先生

源さん(日本在住)
出身地:江戸っ子
呉服屋
45歳

  

米国不動産競売の仕組み

げんじ アメリカの不動産の競売について教えてください。
けいこ先生

アメリカでは税法が州ごとに違うように、不動産法も州によって違いがあるのですが、アメリカの中でも不動産に関する法律はカリフォルニア州が最も整備されていると言われています。ここではカリフォルニア州の不動産競売の仕組みについて解説いたします。

まず、「競売」を英語では「Foreclosure(フォークロージャー)」といいます。
しかし、競売と一言で言っても、実はいくつかの段階があり、売却の方法も異なります。

A.「PreForeclosure」 
まず、住宅ローンの支払いが厳しくなって、滞納が続いている状態を「PreForeclosure(競売にかかる前の状態という意味)」と呼んだりします。この状態を簡単に言えば、『ローンの未払いに関する督促状が山のように郵送されている状態』です。不動産登記簿上は、特に何の変化もありません。
いわゆるショートセールとはこの状況、もしくは下記のB)やC)の状態を指していることが多くなります。

B.「Notice of Default(NOD)」
上記の滞納状態が数ヶ月続くと、貸し手(Lender)は第三者機関である受託者(Trustee)にローンが滞納状態になっているのでNotice of Default(NOD)という書類を登記所に登記してほしい旨を申請します。その後、受託者(Trustee)がこの書類の登記を行ないます。この書類は名前が示す通り、Default(債務不履行)をNotice(登記する、知らせる)するためで、「この借り手(Borrower)はローンを滞納しています!このままだと貸し手(Lender)である我々が担保不動産を競売にかけることになるかもしれません!」 と世の人々へ知らせるためのものです。

C. 「Notice of Sale(NOS)」
それでも滞納が続くと、3ヶ月以上経過した後に貸し手(Lender)は受託者(Trustee)にまた申請をして、Notice of Sale(NOS)という書類を登記してもらいます。ここで初めてSaleという言葉が出てきましたね。この書類も名前が示す通り、Sale(競売)をNotice(登記する、知らせる)するためで、「〇月〇日にこの物件は競売にかけられることになります!」と世の人々へ知らせるためのものです。

D. 「競売(Foreclosure/Trustee's Sale)
Notice of Sale(NOS)が登記されると、その書類の中で示されている日時、場所で競売(Foreclosure/Trustee's Sale)がいよいよ実行されます。面白いことに、この競売(Foreclosure/Trustee's Sale)は、カリフォルニア州では屋外で行なわれることが多いようです(例えば裁判所の建物の入り口付近等)。
そして時間になるとNotice of Sale(NOS)を登記した受託者(Trustee)の担当者が実施会場に現れます。受託者(Trustee)はまず、競売(Foreclosure/Trustee's Sale)がキャンセルになった案件の競売番号(Trustee's Sale Number)と物件住所等を読み上げます。

競売(Foreclosure/Trustee's Sale)は何らかの理由でほとんど全ての案件が延期になったり中止になったりすることが非常に多いので、このキャンセルになった物件を読み上げていくのに大変時間がかかります。そしてこれが一通り済むと競売(Foreclosure/Trustee's Sale)の開始です。受託者(Trustee)は同様に競売番号(Trustee's Sale Number)や住所等を読み上げ、「この物件に入札を希望する人はいますか?」と問いかけます。入札を希望する人は手を挙げ入札を希望することを意思表示します。その後、入札をする条件を満たしているかどうかを受託者(Trustee)が確認します。入札をするための条件とは最低入札金額以上のキャッシャーズチェック(アメリカ国内の銀行で発行される現金為替)をその場所に持ち合わせていることです。
入札希望金額以上のキャッシャーズチェックを持参していない場合には競売(Foreclosure/Trustee's Sale)に入札をすることができません。なぜなら、競売(Foreclosure/Trustee's Sale)ではローンを組んで物件を購入することができず、全額現金で購入しなければならないからです。

確認作業が一通り済むといざ競売(Foreclosure/Trustee's Sale)の開始です。
カリフォルニア州での競売(Foreclosure/Trustee's Sale)はサイレントオークション形式ではなく、オープンオークション形式で行なわれます。即ち、入札を希望する人たちが入札金額を伏せて事前に提出する方式ではなくて、例えば市場でのせりや、eBay、ヤフーオークションなどのように、入札を希望する人たちが入札額を競いながら入札金額を吊り上げていく方式で行なわれるのです。入札は受託者(Trustee)が最低入札金額を読み上げて開始されます。
その後、入札を希望する人は手を挙げたり、入札希望金額を発言します。そして、ある入札希望者が提示した入札金額よりも更に高い金額で入札をする人がいなくなった時点で入札のプロセスは終了され、最高額を提示した人が落札をすることとなるのです

E. 「Real Estate Owned(REO)」
上記の競売(Foreclosure/Trustee's Sale)では入札が実施される場合もありますが、入札がない場合も当然出てきます。入札がない場合には物件の所有権が貸し手(Lender)に移転することとなります。これが、「Real Estate Owned(REO)(by Lender)」といわれる状態です。ほとんどのローンの場合、貸し手(Lender)は銀行のことが多いので、Bank Owned(銀行所有)と言われたりもします。本来、銀行は、競売(Foreclosure/Trustee's Sale)で不動産を売却して、できるだけ早くお金を回収したいのですが、物件が売れなければ、自らが物件所有者になってしまい、その後物件を売却して貸し出した金銭を回収することとなるのです。

げんじ なるほど。一言で「競売」といってもいくつもの状況があるのですね。
では、競売で不動産を購入するとしたら、どの状況で購入するのが一番得策なのでしょうか。
けいこ先生

気に入った物件が無くなってしまうことを考えると一概には言えませんが、REOの状況の物件は比較的購入しやすいと言われています。競売(Foreclosure/Trustee's Sale)にかけられたのに、売れ残ってしまった物件ではありますが、REOの物件は、もはやそれ以外に売却の手段がないために、実は競売(Foreclosure/Trustee's Sale)よりもメリットがある場合も多いのです。

例えば、競売(Foreclosure/Trustee's Sale)で物件を購入する際には、現金買いが鉄則で、ローンを組むことができません。
また、競売に出される物件はオープンハウス(物件内覧会)が開催されるようなことはなく、購入前の物件内査定はほとんどの場合は不可能です。

その点、REOでは、ローンを組むことが可能です。
また、オープンハウス(物件内覧会)も開催されますし、不動産会社に依頼すれば、大概の場合は物件内を見ることもできます。

げんじ なるほど。
昨今、「ショートセール」という言葉をよく耳にしますが、これはどの状態を指しますか。
けいこ先生 ショートセールとは、ローンの残高が物件価値よりも高い状況で売却することを言います。そして、ローンの残高と売却価格の差額は借り手(Borrower)ではなくて、貸し手(Lender)に泣いてもらうことがほとんどなのです。ご存知の通り、サブプライムローンショック以降、アメリカの不動産の価格は下落したので、少ない頭金で高い利息を払っている方は、ローンの残高のほうが現在の物件価値よりも高いという担保割れの状況になってしまっていることが多々あるのです。
げんじ なぜショートセールの取引には時間がかかると言われているのでしょうか?
けいこ先生 ショートセールとして市場に売り出されている物件の多くは、少しでも早く売りたい売り手が売却希望価格を市場価格よりも安く設定したりしています。
しかしながら、この価格には銀行(Lender)からのOKが下りていないのが実情ですし、少しでも高く、ローンの残高に近い金額で売却したい銀行(Lender)としては、「持ち主が独自につけた価格が妥当なのか?」、「その後の競売にかければもっと高く売れるのではないか?」等を危惧するため、銀行内での査定に多大な時間を要します。そのため、一般的に銀行からの事前認可(Pre Approval)をもらっていないショートセールの取引には時間がかかると言われているのです。

≪各購入システムの比較表≫
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