米国不動産 Q&A 教えて!けいこ先生

ホーム » 米国不動産 Q&A 教えて!けいこ先生 » 非居住者による不動産売却の際の源泉徴収税(FIRPTA)

けいこ先生

けいこ先生(LA在住)
出身地:東京
LAで事務所をもつCPA
30歳
日英バイリンガル

けいこ先生

源さん(日本在住)
出身地:江戸っ子
呉服屋
45歳

  

非居住者による不動産売却の際の源泉徴収税(FIRPTA)

げんじ 今年不動産を売却し、現在エスクローに入っていますが、売却の際に税務当局へ仮納税しないと聞きましたが、本当でしょうか。
けいこ先生 本当です。Foreign Investment in Real Property Tax Act of 1980 /FIRPTAとよばれる、非居住者の方が不動産を売却する際に非常に重要になってくる税法があります。では先ず、源泉税の仕組みについてお話ししましょう。
通常、アメリカ非居住者の日本人がカリフォルニア州にある不動産を売却した場合、IRSへ「売却額の15%」(2016年2月以前は10%でした)、カリフォルニア州へ「売却額の3.3%」のTax Withholding(源泉徴収)が義務付けられています。
げんじ $850,000で購入した不動産を$900,000で売却したので、$900,000の15%の$135,000をIRSに、3.3%の$29,700をカリフォルニア州に徴収されてしまうということでしょうか。
けいこ先生 その通りです。売却利益ではなく、売却価格にかかりますので、大きいですね。
残りの$735,300が源さんの手元に残ることになります。
これは非居住者がアメリカの不動産を売却した際に、Tax Return(確定申告)をせず、税金を納めないでそのままになってしまうことを危惧してできた規定です。
げんじ 実際にどうやって誰が源泉徴収をするのでしょうか。
けいこ先生 では、実際の源泉徴収の流れをお話ししましょう。
先ず、売却が成立(エスクローがクローズする)してから20日以内に、買手はForm 8288とForm8288-A、Bを作成し源泉税額のCheck(小切手)と共にIRSへ送付します。
その後、IRSから受取印の押されたForm8288-Aが売手の元に返送されてきます。これでFederalの源泉徴収は完了です。このフォームは、Tax Return(確定申告)の際に添付しなければなりませんので、大切に保管しておく必要があります。
ここで重要なのは、Tax IDの同時申請です。通常アメリカ非居住者の方はSocial Security Numberを持っていないため、Tax IDを取得し、一連の源泉徴収作業を進める必要があります。
2003年11月以前はTax IDがなくとも、源泉徴収やその後のTax Return(確定申告)での還付や繰越がスムーズに行われていましたが、2003年11月にIRSの規則が変更し、Tax IDの取得の重要性が強調されました。
Tax IDを取得しない場合、源泉徴収税の繰越や還付請求が認められない、または無駄に時間がかかる、といったケースがみられますので、Tax IDの取得をおすすめします。具体的な取得方法は、こちらをご参照下さい。
げんじ カリフォルニア州はどうでしょうか。
けいこ先生 買手がForm593とForm593-Bを源泉税額のCheck(小切手)と共にカリフォルニア州へ提出し、売手がForm593-Cをエスクローオフィサー(中立的な立場で決済をする第三者機関)に提出します。以上でカリフォルニア州での源泉徴収は完了です。
げんじ これらのフォームは自分で作成しないといけないのでしょうか。
けいこ先生 通常、上記のフォームを作成するのはエスクローと呼ばれる中立的な立場で決済をする第三者機関ですので売買する当の本人が直接作成する必要はありません。
しかしながら、非居住者の売買に慣れていないエスクローの場合、これらのフォームの作成を行わない場合もありますので注意が必要です。
げんじ 源泉徴収が完了しても、Tax Return(確定申告)をしないといけないのでしょうか。
けいこ先生 その通りです。アメリカで不動産を売却した場合は、源泉徴収が完了してもTax Return(確定申告)の義務があります。
この確定申告で算出された税額と、既に源泉されている税金とを比較し、源泉金額が足りなければ追加で税金を支払い、源泉金額が多ければ税金の還付を受けられる、ということになります。

売却損等により、この源泉徴収を回避する方法はこちらをご参照ください。

尚、源さんが株式を持つアメリカ法人(アメリカ不動産持分法人)の株式を売却する際にもこの税法が適用されますので、注意が必要です。これは、法人の資産の50%以上が不動産(不動産の評価は時価)である場合、USRPHC (US Real Property Holding Company) と認識され、例え株式売却の場合でも、不動産売却と同様の概念にて、FIRPTA(Foreign Investment in Real Property Tax Act of 1980) が適用されるためです。(一度USRPHC (US Real Property Holding Company) と認識されると5年間適用されます。)

FacebookTwitterGoogle+Share
住宅ローン、リファイナンス、不動産投資をお考えの方は、今すぐお気軽にご相談ください!